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76)経営戦略について(その5:正攻法と奇策) 

 みなさん、こんにちは! 戦略成功の必要条件として、「戦略目的」が、組織や環境の諸要素に「適合」することが大 切である」と述べました。 実は、この「適合の仕方」についてですが、3つのタイプがあると、私は考えています。 まずは、1つ目です。「正攻法と奇策」ということです。 ここで、戦略のバイブル、『孫子』より、有名な一節を引用します。 「 凡(およ)そ、戦いは、 正を以て合い、奇を以て勝つ 」 「およそ戦闘というものは、定石どおりの 正攻法 で、不敗の地に立って、敵と会戦し、状況 の変化に適応した 奇策 で打ち勝つのである」(『新訂 孫子』(金谷治訳註)より) 「 正攻法 」は、「正面作戦」のことでもあります。対象に積極的に働きかけることです。 「能動的適合」と言ってもいいでしょう。 「 顧客 への適合」で言えば、以下のような内容になります。 「顧客のニーズを読み、ときには新しいニーズを掘り起こすような積極的対応をしたり、ニ ーズの変化にも能動的に対応する。」 一方、「奇策」です。「ひとの思いつかない、差別化した手を打つこと」です。「レバレッ ジ(「てこ」の作用)の効く策」と言ってもいいでしょう。 同じく、「 顧客 への適合」で言えば、以下のような内容になります。 「顧客のニーズというものの本質をうまくついて、できれば利用させてもらって(味方にな ってもらう等)、顧客を「てこ」として、企業全体の望ましいシナリオを描いていく」 「経営課題」を解決するための戦略策定では、つねに、「正攻法」と「奇策」を組み合わせ ることで、戦略成功の確率もずっと高まることでしょう。 <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

75)経営戦略について(その4:戦略成功の必要条件)

みなさん、こんにちは! 組織の経営課題の解決のために、展開戦略(以下、「戦略」と言う)を策定します。 策定された戦略が、経営課題の解決に成功するためには、どのような条件が必要でしょう か。 「戦略の内容(目的)が、組織の置かれた状況(環境)や、自分(組織)の能力に適合して いる時、戦略は、はじめて成功する」と、一般的に言われます。 中国古典『孫子』には、上記と同様の趣旨ですが、以下のような一節があります。(解説は 省略いたします) 「九地の変(環境の多様なあり方)、屈伸の利(自軍の能力のもつ特色)、人情の理(自 軍の兵の心理)、察せざるは可(べ)からざるなり。(『新訂 孫子』金谷治註 より) 以上をまとめますと、「戦略の目的が、組織と環境の要素に 適合 することが、戦略成功 の必要条件である」と、言えるでしょう。 尚、この場合の「適合」ですが、「相手を所与として、単に、受身的に合わせる」だけでは なく、「積極的に働きかけていく」、といったニュアンスを含んでいます。 以下、「戦略の目的」と、組織と環境の「要素」を整理することにより、「戦略成功の必要 条件」を、具体的にまとめてみました。(『経営戦略の論理』(伊丹敬之著)などを参考) ①戦略の目的(基本的には、下記のいずれかに分類されます)   ❶新たな商品やサービスの開発・変革   ❷商品やサービスを提供する、「ビジネスシステム(事業の流れ/連鎖)」の開発・変革 ⓶組織要素   ❶経営資源(ヒト/モノ/カネ)   ❷情報/技術(見えざる資産)   ❸モチベーション(やる気) ③環境要素   ❶顧客/市場   ❷競合 以上をまとめますと、結論としては、「戦略の目的(❶または❷)が、組織要素(❶、❷、 ❸)と環境要素(❶、❷)の全てに適合すること」が、「戦略成功の必要条件」であるとい うことです。 <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

74)経営戦略について(その3:経営戦略の本質)現実と非現実とのたくみなミックス

 みなさん、こんにちは! 戦略は、中核戦略であるビジョン(What)と、それを実現するための展開戦略(How)とから成ります。 また、ビジョンは、経営目標、ありたい姿、経営課題より成り、なかでも、 経営目標(売上、利益など)の決定が極めて重要 であることも述べました。 そもそも戦略とは、どういう機能なり役割があるのでしょうか。 事業計画を立てるときに、まず組織能力としての現実の姿(現状レベル)を把握します。そして、ターゲットとしての目標を設定します。 当然ながら、現状レベルと、ターゲットとしての目標レベルには、ギャップ(へだたり)があります。このギャップを埋めるためにある活動が、管理でありマネジメントといえるでしょう。 ここで、重要なことは、ギャップの大きさです。ギャップが小さければ、戦略を立てるまでもなく、戦術をたて、改善するレベルで容易に目標を達成できるでしょう。 しかし、目標を達成しても、事業計画としては、さみしい限りです。組織や取り巻く環境の変化が激しく、競争も厳しいなかで、組織の存続は全く保証されないでしょう。 一般に、「目標レベルは、背伸びすれば到達できるぐらいが適切である」と、よく言われてきました。しかし、現在は、そういった考え方は通用しないと私は思います。 背伸びどころか、ジャンプをしなければならないと思います。 いいかえると、現実的な目標ではなく、まずは、思い切った、 非現実的な目標 を、設定してみることが大切と考えます。 松下幸之助先生は、「売り上げを2~3割増やすといったレベルの目標設定では、必死で頑張ることはなく、大した知恵も出ないので、へたをすれば未達成に終わる可能性が高い。 むしろ、2倍、3倍の目標を設定したほうが、皆必死で頑張るので、目標は未達成になるかもしれないが、成果としては格段と大きくなる」といった意味のことを言われています。 これには、「人間の知恵には限りがない」といった、「人間性尊重の哲学」がベースにあると、私は思います。 以上から、「非現実的な目標設定することは、必ずしも非合理的なアプローチではない」と、言えるでしょう。 具体的なアプローチとしては、私は以下のように考えています。 ❶ 現実にとらわれずに 、おもいきった「目標」(売上や利益)を設定する。 ❷目標を達成するための「ありたい姿」(顧客、商品/サービス、経営...

73)経営戦略について(その2:経営戦略の構成)

 みなさん、こんにちは! きょうは久しぶりの雨です。 「経営戦略」は、基本的に「ありたい姿」(What)と「展開戦略」(How)から成ることは、コラム72にてご説明しました。 この「ありたい姿」のことを、一般的には「ビジョン」という場合が多いのではないかと思います。 この「ありたい姿」(What)に、「経営目標」(売上や利益など)と「経営課題」(「経営目標」と「ありたい姿」を実現するための、解決すべき課題)を加え、セットにしたものを、私は「 ビジョン 」と呼ぶようにしています。 「 中核戦略 」とも呼んでいます。 もちろん、「ビジョン」の中心となる部分は、「ありたい姿」です。 いいかえれば、「ありたい姿」は、「狭義のビジョン」といえるでしょうか。 「経営目標」、「ありたい姿」、「経営課題」をセットにして、「中核戦略」とするには、大きくは、2つの理由があります。 1つは、この3つの要素は、互いに、密接にリンクすべきだからです。 つまり、「経営目標」が変われば、それを実現する「ありたい姿」は、もちろん変わるべきです。 また、「ありたい姿」が変われば、その実現のために解決すべき「経営課題」も変わります。 バラバラで、は、「経営目標」と「ありたい姿」の実現は不可能になります。 逆にいえば、「経営目標」の設定が、いかに重要であるか、ということです。 (この部分は、経営戦略の本質でもあるとおもえるので、次回、さらに掘り下げてみたいと思います。) もう1つは、「経営課題」まで抽出し、具体化したものが、「ビジョン」に含まれるので、 「ビジョン」を実現していくための、基本方針や展開のための戦略(展開戦略)をロジカルに設定しやすくなるからです。 シームレスということでしょうか。 この展開戦略が策定されると、あとは、比較的容易に、「アクションプラン」といった、戦術策定の段階に入ることができます。 以上を簡単にまとめます。 「経営戦略」は、「ビジョン」と「展開戦略」とから成ります。 「ビジョン」は「経営目標」、「ありたい姿」、「経営課題」から成ります。 「ビジョン」と「展開戦略」、さらには、「アクションプラン」まで、ロジカルかつシームレスにつながります。 「ビジョン」は、「経営戦略」の最重要部分であり、まさに「中核戦略」といえます。 今日はここまでにしたいと思います。 <TOPペー...

72)経営戦略について(その1:経営理念と経営戦略の関係;Why、What、How)

 みなさん、こんにちは! いよいよ、今回より、「経営戦略」に入ります。 経営戦略とは、「 組織の持続的競争優位を確立するための基本的な考え方 」と、いえるでしょうか。 その構成要素として、私は、3つあると考えています。 「 なぜ(目的、意味)」(Why )、「 何をするのか」(What )、「 どのように実行するのか」(How )の3つです。 「理念経営」にあてはめてみましょう。 すでに学んできました、「 経営理念 」が、「 なぜ(目的、意味)」(Why )に当たります。 経営戦略の、最上位にある「考え方」(概念)が、「経営理念」です。組織活動の大きな方向性を示すものです。 「経営理念」を具現化するためにあるのが、まずは、「 ありたい姿 」です。 組織全員で共有し、目指すべきターゲットです。 これが、「 何をするのか」(What )に当たります。 「ありたい姿」を実現するためにあるのが、3つめの「 どのように実行するのか」(How )に当たります。 「ありたい姿」を実現するためには、いろいろな「経営課題」があるはずです。 それら1つづつ解決するために、具体的に展開していくための戦略があります。 私はこれを「 展開戦略 」といっています。 ただし、以降、「 経営戦略」という場合は、「ありたい姿」と、「展開戦略」のセットのこと とし、「経営理念」とは一応、区別したいと思います。一般的には、区別する場合が多いと思われるからです。 (「経営戦略」について、詳しく学ばれる場合は、『経営戦略の論理』伊丹敬之著(日本経済新聞出版社)がお勧めです。やや難解な部分はありますが。) 今回は以上とします。 <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

71)経営理念の事例:JALグループ

 みなさん、こんにちは! 今日も、経営理念の事例を学んでいきたいと思います。 日本航空(LAL)は、2010年に、戦後最大の負債を抱えて経営破綻しました。 誰もが再建は不可能と思っていました。 その再建を、見事になしとげたのが、キョーセラの稲盛和夫氏です。 成功の要因はいろいろあるようです。 しかし、その中でも、経営理念が、奇跡のV字回復の原動力になった、と言われています。 以下に、「JALグループ経営理念」、「JALフィロソフィー」をご紹介します。 「JALグループ経営理念」(2011年制定) 日本航空グループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、 1、お客様に最高のサービスを提供します 2、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します 経営理念の、「志」(あるべき理想の姿、ミッション、基本理念)に当たると思います。 「JALフィロソフィー」(2011年制定) (1)すばらし人生を送るために  1、成功方程式:人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力  2、正しい考え方をもつ  3、熱意をもって地味な努力を続ける  4、能力は必ず進歩する (2)すばらしいJALとなるために  1、一人ひとりがJAL  2、採算意識を高める  3、心をひとつにする  4、燃える集団になる  5、常に創造する 経営理念の、「生き方(生きざま)」(経営指針、行動指針)に当たると思います。 <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

70)経営理念の事例:豊田綱領

みなさん、こんにちは! きょうは、経営理念の具体的な事例をお示しすることで、より理解が深まることと思います。 豊田佐吉先生は、私の尊敬する師の一人です。 その豊田佐吉先生の遺訓として、息子、豊田喜一郎(トヨタ自動車の創業者)らが中心になりまとたものが、有名な「豊田綱領」です。 経営理念の「志」に当たる部分といえるでしょう。「社是」といってもよいです。 現在のトヨタの経営理念はずいぶん変わりましたが、豊田綱領の基本精神は含まれているのではと、私は考えています。 豊田綱領 1、上下一致、至誠業務ニ服シ、産業報国ノ実をヲ挙グベシ。 2、研究ト創造ニ心ヲ致シ、常ニ時流ニ先ンズベシ。 3、華美ヲ戒メ、質実剛健タルベシ。 4、温情友愛ノ精神ヲ発揮シ、家庭的美風ヲ作興スベシ。 5、神仏ヲ尊崇シ、報恩感謝ノ生活ヲ為スベシ。 註)至誠:きわめて誠実であること 豊田綱領は、「志」であり、以下のような構成であるといってよいでしょう。 数字は、豊田綱領の数字と対応しています。 1:あるべき理想の姿(存在意義/パーパス) 2:ミッション(使命) 3~5:基本理念(大切にする価値) 以上です。     <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

69)経営理念の役割

 みなさん、こんにちは! 今日は、「経営理念」の役割についてです。 組織における、経営理念の役割には、何があるのでしょうか。 まず最初に、「経営理念」と何なのか、確認しましょう。 「組織」を「人」に例えると、一言でいえば、《「 志 」と「 生き方 」》のことでした。(→コラム64) ここで、「 志 」は、「基本理念」(価値観)、「あるべき理想の姿」(存在意義)、「ミッション」(使命)より成ります。 また「 生き方 」は、「経営指針」と「行動指針」より成ります。 そういった観点で、組織をみてみると、以下のような役割が浮かんできます。 ①各メンバー(もちろん、経営トップも含みます)が、揃って向かうべき基本的な方向となる。 ②各メンバーの働きがいや生きがい、勇気の原動力となる。 ③日々の判断・行動の、基準や指針となる。 ④新たな製品やサービス、ビジネスチャンスを、生みだすもととなる。 ⑤すぐれたカルチャーをつくる。 ①、②、③については、ご説明は割愛いたします。 「志」には、上述のように、「 事業目的 」であるミッション(使命)が含まれていることからも、④については、容易に、ご理解されることと思います。 最後の⑤です。 「経営理念」が、組織に浸透、定着化した結果、得られるのが「カルチャー(文化)」と言われています。(→コラム51) 「生き方」には、上述のように、「経営指針」と「行動指針」から成ります。 とくに、「行動指針」は、「組織全員のとるべきマインド(仕事への取組み 姿勢 、 習慣 、 態度 )」のことであり、カルチャー形成の必須の要件であると思います。 以上より、⑤についても、ご理解・納得されることと思います。 <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

68)最強のリーダーシップ(その4:最強のリーダーシップとは、「木鶏」&「如水」)

 みなさん、こんにちは! きょうは、理念経営を担当するリーダーシップとして、最も理想的なコンセプトを学んでいきたいと思います。 「木鶏」と「如水(上善は水の如し)」を両立させることで最強のリーダーシップを発揮できるようになるのではないか、というのが私の考え方です。これを、以下、 深堀して検証 してみたいと思います。 (「木鶏」、「如水」については、コラム55~57、をご覧ください) 私の尊敬する師であり、メンターでもある方から、人生の生き方(生き様)として、 「鋼鉄(スティール)」のように、「 強く 」かつ「 しなやかに 」生きることの大切さを学んでいます。 この「 スティールの例え 」は、理念経営を担当するリーダーにも、当てはまるでしょう。 「経営マインド」の中核に、「経営理念」があるからです。(→コラム57) 先に、「経営理念」の核(本質)とは、「人」に例えて、一言でいえば、それは 「志」と「生き方(生き様)」 であると、私流にご説明してきました。(→コラム63~64) 「スティールの例え」を応用させていただくとするならば、「志」は もっと強く 、「生き方」は、 もっとしなやかに ということができるのではないかと私は思います。 さて、ベストセラーである『ビジョナリー(理念)カンパニー②』にて、リーダーの能力(リーダーシップ)を、最下層のレベル1から、最上位のレベル5までの5段階で、示しています。 最高位の「 レベル5のリーダーシップ 」は、経営能力で最も優れ、会社を永続的成長に導いた実績をもつ、経営者のレベルに該当するようです。 米国では、GEのトップであったジャック・ウエルチなど、日本では、トヨタ自動車の創業者である、豊田喜一郎などがリストアップされています。(『ビジョナリーカンパニー②』ジェームス・コリンズ、『トヨタ経営システムの研究』日野三十四、など) さて、この「レベル5のリーダーシップ」の要件として、相反するような2つのことが、あげられています。 ①自社を偉大な企業にするために、 必要なことはすべてやり遂げる 、「不屈の精神や燃えるような情熱」を 秘めている 。 ② 個人としては 、「控えめ」で「謙虚」である。 最初に、「 木鶏」と「如水」の両立が、最強のリーダーシップ発揮の要件 である、と、私なりに、持論を、提案させていただきました。 結果と...

67)最強のリーダーシップ(その3:上善(じょうぜん)は水のごとし)

 みなさん、こんにちは! 「木鶏(もっけい)」と同じく、中国古典で有名な言葉、「上善は水の如し」を学んでいきたいと思います。今までご存じでなかった方も、是非、シェアしましょう。 《上善は水の如し》 世の人は、 だれでもが一歩でも上へ、 一つでも高い地位をほしがっている。 みずはその反対に、 低い所へ低い所へと 流れていく。 つぎつぎ支流をかかえて、 だんだん広く大きくなっていく。 最後は海に流れて、偉大な存在になる。 (『老子』より、引用) これと似た言葉がありますので、合わせご紹介します。 意味はほぼ同じと思います。私も大すきな古歌です。 すゑ(末 )つひに 海となるべき やま水も しばし木の葉の したくぐるなり 以下、解説です。(『老子・荘子の言葉』より引用) 理想的な生き方は水にある。 最上のいいこと(上善)というのは、たとえてみると、水のようなものである。 水は善く万物を利して争わず 水は、万物に利益を与えていながら、決して、他と争わない 。 この自然の中で、水なくして生きているものは、一つもない。 それほど偉大な存在でありながら、決して誇ることをしない。 水は、丸い器に入ると、丸くなる。四角の器に入ると四角になる。 どんな形の器にも逆らわない。 柔軟であり、謙虚 である。 以上です。少しでも皆さんにとって、ご参考になれば幸甚です。 <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

66)最強のリーダーシップ(その2:木鶏(もっけい)②、木鶏の生き方)

 みなさん、こんにちは! きょうは、「木鶏の生き方」です。 「木鶏」については、コラム65にて学びました。 今回は、「木鶏」をイメージする際、その生き方や生き様は、どのようになるのか、2つ、ご紹介いたします。 【その1】 それ遠きをはかる者は、 百年のために杉苗を植えう まして 春まきて秋実る物においてもや 故に富裕なり 末広がりの成長を永続させることができれば、社員を幸せにすることができ、社員の幸福を通じて社会に貢献することができます。 経営というのはまさに、百年先の人々のために木の苗を植えるようなものである、と思います。(『いい会社を作りましょう』塚越寛、より引用) 【その2】 この秋は 雨か嵐かはわからねど 今日の勤めに 田の草を取る 1年後の目標達成のために、今日を闘って生きるのではなく、今日の自分の勤めとして、今日を思い切って生きる。(『老荘思想に学ぶ人間学』境野勝悟、より引用) 以上、「木鶏の生き方」でした。   <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

65)最強のリーダーシップ(その1:木鶏(もっけい)①、木鶏とは)

 みなさん、こんにちは! 今日は、「木鶏」という言葉の意味を、みなさんとシェアしたいと思います。 「木鶏」というと、知らない方が多いことと思います。 私自身、何年か前に、中国古典に関心があったときに、初めて知りました。 徳あるリーダーの、一つのシンボルになりそう、ということで、今回、取り上げてみました。 「木鶏」とは、「荘子」という書籍に収められている、故事に由来する言葉です。 「木彫りの鶏のように全く動じない、闘鶏における最強の状態をさす」という意味があるようです。 昭和の名横綱、双葉山の、座右の銘としても有名です。白鵬も双葉山を師として仰いでいるようです。おそらく、「木鶏」をイメージしていることでしょう。 ちなみに、闘鶏における、最下位から順に、下記のように説明されています。 1、空威張りして、闘争心にあふれている。 2、他の闘鶏の声を聞き、姿を見るだけで、いきり立つ。 3、目を怒らせて、己の強さを誇示する。 4、他の闘鶏が鳴いても、全く相手にしない。まるで木鶏のように泰然自若としている。 以下のような解説があります。 「表面にあらわれた勢いを少しづつ消し、立ち向かう気力を心に収める。 これは闘志をなくすことではなく、闘志を心の中に収めること。これが「徳」となる。 闘いに勝利する要素は、勇猛さやテクニックにあるのではなく、その特性にあるのだ。」 (『荘子の心』より引用) 「悪い状況に直面している時、ヤマ場を乗り越えることができるかどうかは、自分の心境に拠っている。心境が外の恐怖に打ち勝つほど広大であれば、本当の勇者になり、持っている技を発揮することもできる。だが、もし外の環境に負けたなら、何事も成し遂げられないだろう。(同上より引用) ビジネスの世界で、リーダーシップの在り方として、「覇道」と「王道」とが、比較されることがあります。 理念経営を担うリーダーとしては、当然、「覇道」ではなく、「王道」を目指すべきであると思います。 その際、この「木鶏」が参考になるのではないでしょうか。   <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/  

64)経営理念について(その13:経営理念の本質とは②、「志」と「生き方」)

 みなさん、こんにちは! 今日は、いよいよ、経営理念の核の部分(本質)に迫ります。 「 人 に例えることで、シンプルでわかりやすい表現」にすることが、狙いです。 まず、「会社(組織)の経営理念」を、今までの、おさらいをしながら、まとめてみました。 《 会社(組織 )の「経営理念」》:経営の 対象 は「 事業 」 ①核となる部分(狭義の経営理念)  ❶あるべき理想の姿(存在意義):光り輝く組織→ 社格 向上  ❷使命(ミッション):社会貢献(人々の幸福、豊かな社会)  ❸基本理念(価値観):「利自即利他」 ②指針となる部分  ❶「経営指針」(「経営マインド」など): 経営者 としての、 事業 への取組み姿勢  ❷「行動指針」(4つの基本マインド):「思いやり、学び、反省、向上心」 この「会社(組織)」の「経営理念」を「人」の「経営理念」に 変換 してみますと、以下のようになるでしょうか。 《 人 の「経営理念」》:経営の 対象 は「 人生 」 ①核となる部分(狭義の経営理念)  ❶あるべき理想の姿(存在意義):光り輝く自分→ 人格 向上  ❷使命(ミッション):社会貢献(人々の幸福)  ❸基本理念(価値観):「利自即利他」 ②指針となる部分  ❶「経営指針」( 人生 への取組み姿勢)  ❷「行動指針」(4つの基本マインド):「思いやり、学び、反省、向上心」 以上の「組織の経営理念」と「人の経営理念」を比較検討します。 目的は、「組織の経営理念」を、よりコンパクトにするためです。 「人の経営理念」では、以下のようにまとめました。 ①-❶、①-❷は、合わせると(①-❸は、❶と❷のベースです)、「 志 」といえるでしょう。    (「志」には、 心に思い決めた、目指す行先 、といった意味があるようです) ②-❶、②-❷は、合わせると、「 生き方 」(生き様)といえると思います。 この結果を、「組織の経営理念」にフィードバックし、コンパクトにします。 経営理念は、以下のように、コンパクト化されます。 ①核となる部分(狭義の経営理念)  ❶、❷、❸を合わせると、「 志 」 ②指針となる部分  ❶、❷を合わせると、「生き方」(生き様)  以上をまとめますと、 「会社(組織)」を「 人」に例えることで 、「組織の経営理念」の核の部分(本質)としては、以下のように、コンパクト...

63)経営理念について(その12:経営理念の本質とは①、組織は生き物)

 みなさん、こんにちは! きょうは、「経営理念の本質とは」というテーマです。 ここまで、「経営理念」について、11回分のシリーズで、皆さんと共に、学んできました。 私自身も、あらたな気づきがあり、理解・納得し、腹落ちすることが多々ありました。 しかし、これが「経営理念」なのだ、という 核の部分(本質 )が、いまいち、あいまいな感じがしていました。 そこで、「経営理念」の 核の部分(本質 )を、シンプル、かつ分りやすい表現で、コンセプトとして、まとめてみたいと思います。 会社組織については、しばしば、 生命体(生き物、ヒト )に例えられることがあります。 たとえば、経営学の泰斗、ドラッカーは、「 組織の精神(Organization spirit) 」という表現をしています(「spirit」には、精神、魂、精霊、といった意味があるようです)。 「 組織の精神 というものを大切にするマネジメント、、、。」といった具合です。(『マネジメント』より抜粋) さらには、日本の経営学の重鎮、伊丹敬之/加護野忠雄両氏の共著、『ゼミナール経営学入門』にて、以下のように、会社(組織)について説明しています。 「 企業は生き物 である。物理的な存在、固定した存在、孤立した存在ではなく、生き物のごとく変化し、生き物のごとく多様な側面をあわせ持った、そして社会の中に生きる存在、生かされている存在である。」 要するに、「組織には精神や魂があり、生き物のごとく変化し、社会の中に生きる存在である。」ということなので、結論として、「 組織」は、「人」に例えることができる 、といえることになります。 以下、「組織」と「人」を対比しながら、「組織の経営理念の本質」を明らかにしていきたいと思います。 人間と関連させながら、類推していくことは、我々にとって、 直感的にも理解しやすい からです。 とりあえず、今回はここまでとします。 <TOPページへ> https://rickrinen.blogspot.com/

62)経営理念について(その11:行動指針➁、基本マインド)

 みなさん、こんにちは! 今日は前日(コラム61)に引き続きまして、「行動指針➁」、「基本マインド」です。 マインドとは、組織全員のとるべき、「仕事への取組み 姿勢 、 習慣 、 態度 」のことです。 なかでも、特に重要で必須のマインドのことを、私は「基本マインド」と呼んでいます。 「行動指針」の核の部分に当たるのが、まさに、この「基本マインド」です。 「基本マインド」は、「思いやり」、「学び」、「反省」、「向上心」の4つのパートから構成されています。 私は、これらを、「4つの基本マインド」と呼んでいます。 個々のご説明は不要と思いますので、割愛させていただきます。 以下、4つの基本マインドについて、具体的な「姿勢、習慣、態度」を列挙しました。 私自身の過去の経験も踏まえ、「理念経営」の行動指針として、不可欠と思われるものを厳選いたしました。 なお、4つの基本マインドに対応させて、徳あるリーダーになるための「徳目」を、()にて追記しています(→コラム37、38、39)。 また、成果を出すためのツール、「PDCA」(私は「マネジメントサイクル」と呼んでいます)の、 P lan(プラン:計画の作成)、 D o(ドゥー:計画の実行)、 C heck(チェック:進捗の確認)、 A ction(アクション:計画の見直し)の各段階と対応していることを、『』にて示しました。上記2点についての詳細は、別の機会にさせていただきたいと思います。 皆さんが「行動指針」を検討し、作成される際の、ご参考になれば幸甚です。 基本マインド1:【思いやり】(仁、礼)『P』  ➀お客様には、感謝の気持ちを忘れない。  ➁相手の立場や気持ちに共感できる。  ➂「まごころ」を込めた仕事をする。  ➃ひとの役に立つことを誇りに思う。  ⑤認め合い、助け合い、祝福し合う。 基本マインド2:【学び】(知)『D』  ➀常に問題意識をもって、必要な情報を得る。  ➁体験や気づきを大切にする。  ➂疑問点やポイントは現地・現物で確認し、データや論理で検証する。  ➃専門知識や技術・技能習得の努力を怠らない。  ⑤成功からも失敗からも教訓を学び取る。 基本マインド3:【反省】(信、義)『C』  ➀問題点が発生したら、自分の責任と考える(常に、当事者意識を持つ)。  ➁ひとのアドバイスには謙虚に耳を傾け、間違い...

61)経営理念について(その10:行動指針➀、その意義)

 みなさん、こんにちは! 今日は、「行動指針」です。 「行動指針」については、多くの会社で導入されていると思われます。 ご存知の方も多いことでしょう。リッツカールトンのクレド(信条)が有名ですね。 いずれにしましても、私としましては、「行動指針」を以下のように定義しています。 「組織全員のとるべきマインド(仕事への取組み 姿勢 、 習慣 、 態度 )」です。 要するに、「 私たちは、こういうマインドで、日々の仕事に取り組んでいます 。」ということです。 理念経営を目指す経営者にとって、あるいは、会社にとって、「 経営理念」が組織に浸透し、定着化することは、最重要課題である 、といってもいいでしょう。 なぜなら、組織全員が、「経営理念」実現に向かって、日々、自発的に、当たり前のごとく仕事に取り組むようになるのですから、会社としての成果には、計り知れないものがあることは、言うまでもないからです。 勿論、経営層のマネジメント能力もそれに見合ったものであることは言うまでもありません。 では、何をもって、組織に、経営理念が浸透し、 定着化 したといえるでしょうか? 私の尊敬する経営学者は、「 カルチャー(文化)が形成されること 」であると、スッパリと言っきっています。私も、経験的に、その通りであると、理解・納得しています。 そのカルチャーが形成されるための必要条件は、全社員が、「会社のあるべき理想の姿」を目指し、共有し、 新たな価値創出に向けて 、日々努力し続けることであるといわれています。 そういった 活動の「場」を通じて 、創造的な、理念経営にふさわしいカルチャーが形成されるということです。 ただ、努力するだけでは、カルチャーは形成されません。そこで、不可欠(十分条件)というべきものが、最初に触れました、「組織全員のとるべき マインド (仕事への取組み 姿勢 、 習慣 、 態度 )」です。 今日のテーマの「行動指針」です。 ビジネスにおける、 必須のマインド (わたしは「基本マインド」と呼んでいます)があるというのが、長年の自身の体験から得られた、持論とでも言うべきものです。 次回、この「基本マインド」(4つで構成)と、それぞれに関連する、 具体的な 「姿勢、習慣、態度」を列挙していき、皆さんのご参考になればと、考えています。 今日は、以上としたいと思います。 <...

60)コーヒーブレイク:「フェーズフリー」って何?

 みなさん、こんにちは! 今日は、久々のコーヒーブレイクで一息入れましょう! 「フェーズ」(phase)には、「段階」、「局面」、といった意味があります。 たとえば、ビジネスでは、製品開発のプロセスの 進捗「段階 」や「 局面」の変化 を示す場合があります。「フェーズ1」とか「フェーズ2」とか言いますし、「新しいフェーズに入った」、などと表現しますね。 コロナ禍以降、とくに「フェーズフリー」という言葉よく使われるようになっているようです。 その場合の意味は、「 平常時」と「非常時」の2つのフェーズ間を自由(フリー)に行き来できる 、という考え方のようです。 言い方をかえれば、「 身のまわりにあるモノやサービスを、平常時はもちろん、非常時にも役立てることができるようにしよう 」、ということです。 災害の多い日本では、今後、 平常時から、非常時対応を前提にする柔軟な社会システムづくり が要求されるようになるでしょう。 今回のコロナ過でもいろいろな事例があります。 まだ発症していない感染者の収容施設として一般のホテルが活用されました。 ホテルも多目的利用への柔軟さ(フレキシビリティ)が益々必要になります。 予め、「非常時には医療施設としての利用を想定した設計」にしておくことなどが要求されるようになるでしょう。 「ものづくり」においても、今回、「マスク不足」がありました。 日本では、生産しているメーカーがわずかであり、外国からの輸入に頼る始末でした。 国内メーカーでも、生産体制の見直しにより、マスクを生産をするところが現れたようです。 「フェーズフリー」は、メーカーでは どういう意味 があるのか、もう少し掘り下げて考えたいと思います。 生産工場では、「製品A」を生産していて、次に「製品B」に切り替える場合に、生産設備では、基本的には「段取り」という作業が必要になります。 切り替えには時間がかかります。その間、設備は止まります。 生産設備を長時間止めることは、生産性が悪化(時間当たりの生産量が減少)しますので、基本的には望ましくありません。 正解は、現実的な対応策として、設備の停止時間分の「在庫」をもつことになります。 上記の例で言えば、「製品A」をあらかじめ生産して、「在庫」として確保しておくことで、生産性悪化を防ぐことができるのです。 さらに、生産性を向上するため...

59)経営理念について(その9:経営指針➃;経営ルール)

  みなさん、こんにちは! きょうは、「経営ルール」です。 「経営コンセプト」が、日 々の経営判断の基準であり、 ガイドライン(方針であり指針)と なります。 日々の経営判断において、この「経営コンセプト」を厳守し、決してブレないために、さらに「経営コンセプト」を具体化・細分化したものが「経営ルール」です。 個々のルールは、実証的データに裏付けされ、熟慮し洞察された結果でなければなりません。 内容としては、「やるべき項目」と「やってはならない項目」を 列挙 することになります。 シンプルな作成方法(例)を、以下、ご紹介します。(『ビジョナリーカンパニー➁』より引用) 【経営ルール作成方法】 ❶あなたの会社が達成した成功例をリストアップする。 ➋あなたの会社が経験した失敗例をリストアップする。 ❸失敗例ではなく成功例と関係している具体的実践方法は何か。 ❹成功例ではなく失敗例と関係している具体的実践方法は何か。 ❺なぜ、これらの実践方法は有効なのか、検証してみる。 ❻以上の実践方法に基づくと、どんな「経営ルール」が最高の成果をもたらすか、列挙してみる。構成するそれぞれの項目は、お互いに補強し合うように首尾一貫していなければならない。 最後に、「経営コンセプト」と「経営ルール」の事例をご紹介いたします。 LCC航空(格安航空会社)で、ビジネスモデルでも有名な、サウスウエスト航空(米国)のものです(『ビジョナリーカンパニー➁』より引用)。「経営コンセプト」と「経営ルール」のご理解がすすめば、と思います。 《事例:サウスウエスト航空》 【経営コンセプト】 活気あふれる低コスト航空会社として 世界最高 になり、 業界慣行に縛られない型破りな存在になる 情熱 をもって、 「 機体一機当たり利益 」を着実に伸ばしていく 【経営ルール】(一部抜粋) ➀2時間以内の近距離路線に徹する。 ➁10~12年にわたって主力機として中型機ボーイング737を使い続ける。 ➂航空機稼働率を高く維持する。ゲートターン(搭乗口で搭乗などにかかる時間)は迅速に、できれば10分以内にする。 ➃機内食サービスは手がけない。 ⑤家族と人間を感じさせるサービスとともに、楽しさを感じさせる雰囲気を維持する。等。 以上です。 これで、「経営指針」全体のご説明が終了しました。「経営マインド」、「経営コンセプト...

58)経営理念について(その8:経営指針➂;経営コンセプト)

みなさん、こんにちは! 今日は、経営指針➂、「経営コンセプト」です。 ここで言う、「経営コンセプト」というのは、現在取り組んでいる複数の事業を絞り込んだり、新たに事業を始める際の、対象事業の適否を判断する際の基準となるものです。  シンプルで使い勝手もいいと思います。とくに、新規事業を興す場合には、価値ある武器となるでしょう。以下、ご紹介したいと思います。(『ビジョナリーカンパニー➁』より引用。筆者、加筆再構築) 自社の『経営コンセプト』の作成は、下記の4段階にて行います。 【作成のステップ】 ➀ ステップ1 :以下つの質問❶、➋に対し、該当すると思われる事業を率直に、リストアップします。 註)事業としては、「製品・サービス販売型」なのか、「顧客体験提供型」なのか、といった「ビジネスモデル」(商売のやり方)のイメージを予め持っておくとよいでしょう。「ステップ3」で大いに関係してくるからです。 質問❶:自社が 世界一 になれる事業は何か? 質問➋: 情熱 をもって取り組める事業は何か? ➁ ステップ2 :質問❶と➋とで、重なる事業を1つ選択します。(重なる事業がなければ 視点(着眼点)、視座(立ち位置)、視野(時間、空間の範囲)を変えてみて、質問❶、➋をくりかえします。   ➂ ステップ3 :下記の質問❸について検討します。 質問❸:ステップ2で選択した事業に対し、 利益 を継続的に生み出す、原動力となる 財務指標 は何か? 商売のやり方(ビジネスモデル)や管理のしかたによって、「質問❸」の答えはかわってくるでしょう。 この点について、2つの事例で簡単に補足させていただきたいと思います。(いずれも、『ビジョナリーカンパニー➁』からの引用。筆者、加筆修正) 事例1)サーキット・シティー(小売り専門店チェーン):通常、 店舗当たりの利益 でみるでしょうか。多店舗展開で、同一地域に密集すると、どうしても、お互いの店舗で、けん制し合い、規模の経済が効きにくくなります。そこで、一店舗当たり利益から、 地域当たり利益 に変更することで、地域ごとに業績を考えるようになりました。店舗間でのチームワークが改善され、競合に差をつけることができました。 事例2)ジレット(髭剃りメーカー):「ジレットモデル」といわれるぐらい、有名なビジネスモデルの会社です。髭剃り本体を安く販売し、利...

57)経営理念について(その7:経営指針➁;経営マインド)

みなさん、こんにちは! きょうは、経営指針の3点セットの1つ目、「経営マインド」について、皆さんと学んでみたいと思います。 経営マインドとは、日々、経営に取り組む際の、基本的な「姿勢、習慣、態度」のエキスを綜合するものです。(ビジョナリーカンパニー➃を参考とし、筆者が加筆再構築) 以下、「経営マインド」を、その「中心の柱」(経営マインドの核)と、「中心の柱」をベースとする「3つのマインド」に分け、それぞれ順にご説明していきます。 まず、「中心の柱」です。 「中心の柱」は、「経営理念」がベースになっています。 「経営理念」の「基本理念」、「あるべき理想の姿」、「ミッション」の3つに対応して、「謙虚さ」、「高い志」、「使命感/情熱」の3つを、柱の必須の要素(基本マインド)としています。    ◆「中心の柱」の構成 ❶「基本理念」→「謙虚さ」が対応               ❷「会うべき理想の姿」→「高い志」が対応               ❸「ミッション」→「使命感/情熱」が対応 「基本理念」(重視する価値観)としては、「謙虚さ」を最重視しました。 「理念経営」としては「徳あるリーダー」を目指したいものです。  「磨くべき5つの徳目」(礼、知、信、義、勇)がありますが(→コラム39)、組織の最上層に立ち、リーダーシップを発揮するためには、「礼」(礼節)、つまり「謙虚さ」が必須であり、きわめて重要であると、私は考えております。組織におけるリーダーシップ論でも、大変重視されているものです。  また、「ミッション」については、「情熱」も加わります。使命感が強くなると情熱が沸き上がってきて、さらなるエネルギー源になるからです。そういった意味で、使命感に情熱が加わることは必須といえるでしょう。 因みに、リーダーシップの要件をランク付けをすると、私の記憶では、最上位は「情熱と謙虚さ」であるといわれています。 次は「3つのマインド」です。 「中心の柱」を、ベースとする、3つの実践的・行動的なマインドがあります。 「建設的危機感」、「実証的創造」、「徹底した規律」の3つです。    ◆3つのマインド ❶建設的危機感             ❷実証的創造             ❸徹底した規律 「建設的危機感」とは、不安感や危機感に対し、落ち着いて状況判断し、反省し、的を得た対応策を...

56)経営理念について(その6:経営指針➀;3点セット)

 皆さん、こんにちは! 今日は、「経営指針」についてです。これまでに、簡単にはご紹介してきましたが、実際に活用できるレベルになるよう、もう少し学んでいきたいと思います。 経営理念の3点セットとして、「基本理念(基本的で最重要な価値観)」、「あるべき理想の姿(存在意義/パーパス)」、「ミッション(使命)」の3つがあります。 この「経営理念」の三点セットに、「経営指針」と「行動指針」を加えたものも、私は広義で「経営理念」と呼んでいます。(→コラム52) 「経営指針」は、会社運営に対して直接的な責任をもつ、社長や経営幹部など(取締役会議や経営会議のメンバー)が守るべき「経営の羅針盤」とでもいえるものです。 日々の経営上の判断や意思決定をする際に、「基本理念」や「パーパス」、そして「ミッション」などが目指す「方向性」とずれないように、担保するためのものです。 私の知る限り、とくに日本では、この「経営指針」なるものを明文化している会社は記憶にありません。会社経営の独自の「ノウハウ」に属することなので、あえて明文化せず、暗黙の了解事項としているのかも知れませんが。 しかし、最近の日本においても、「経営の統廃合」や「役員人材の多様化」などが日常茶飯事になっていますので、私は明文化し、常に経営判断のチェックを、謙虚にしていくことが必須と考えています。その重要性は以下にも述べます。 「経営指針」は、「行動指針」とは、その機能が大きく異なります。 経営者にとっては、「経営のかじ取り役」という、組織全体の将来を左右する重い責任を背負うことになります。その際、経営理念の3点セット、とくに「北極星」とでもいえる、「パーパス」から、いささかの逸脱も決して許されないでしょう。 とくに現在のように、環境変化が激しく、先行き不透明な時代でこそ、この「経営指針」がその存在感を増しているように、私には思えます。「羅針盤」がないと、舵取りで方向性を誤る可能性が高くなるからです。 そういった「経営指針」ですが、やはり3点セットになっており、「経営マインド」、「経営判断基準&経営コンセプト」、「経営ルール」の3つで構成されています。 きっちりと理解納得されるよう、それぞれ順に、基本的考え方や内容を学んでいきたいと思います。 今日は、ここまでとさせていただきます。 次回以降も楽しみにしていてください。 ...

55)経営理念について(その5:ミッション)

 みなさん、こんにちは 今日は、「ミッション」(使命)についてです。 「経営理念」は「存在意義」(北極星)と「経営行動の規範」の2つより構成されます。 後者は、「経営の目的」(事業の 方向付け )と「経営目的を 達成するための方法 」の2つより構成され、私はそれを「ミッション」(使命)と位置付けています 「ミッション」とは、分かり易く言えば、まずは、「お客様に、商品やサービスを通して、顧客にとっての 価値 を提供することで、顧客に喜んでいただく(顧客の創造)」ことです。さらに、その目的を達成するためには、「顧客のニーズを把握し(マーケティング)、顧客にとって価値のあるものやサービスを創出(イノベーション)すること」です。 「我が社のミッションとは何か」、という問いに、具体的に応えるのは、基本的にはそう簡単なことではないと思います。上述のように定義をすること自体は簡単ですが。 私の尊敬するメンターのご説明によりますと、以下のようです(一部、筆者加筆修正)。 「我が社は、何のために存在するのか。なぜこの社会が、国が、世界が、我が社を必要とするのか」という問いに対する答えを求め続けることです。「存在理念」が徐々に形になってくるのですが、必ずしも、明確になり確定することはないでしょう。 なぜなら、会社自体も変化しますし、とりまく環境も変化し続けるからです。 いずれにせよ、そうして、 常に、「存在理念」を探求し続けるような経営者には、「ミッション(使命感)」が生まれてくる ようです。 よく考えてみれば、これは当然のことかもしれません。 「組織の目的」が「存在意義」です。 「ミッション」とは、「経営の目的」と「その目的を達成する方法」のこと、つまり、「最重要の経営行動」と言えるでしょう。 「存在意義」と「最重要の経営行動」とでは、「基本的な考え方・理念」と「現実の経営行動」の違いはあるものの、方向性(ベクトル)は全く同じであると思われるからです。 「ミッションを生み出すための考え方のプロセス」として、私の拙い体験をベースに、私流にまとめますと、以下のようになるかと思われます。 「組織の理想的なあるべき姿(存在理念/北極星)」を 常に念頭に置き、ありありと描き続けます 。 同時に並行して 、実際の経営行動としては、「どのようなお客様に対し、どのような価値を提供することで、...

54)経営理念について(その4:あるべき理想の姿の共有化について)

みなさん、こんにちは! 今日は「あるべき理想の姿(存在意義)」について、さらに考えてみます。 この「あるべき理想の姿(存在意義)」は、トップから第一線まで、企業経営に関わる全ての人々が、その実現を目指すべきものです。たとえて言えば、北極星のようなものであると思います。 北極星(存在意義)を目指す以上、「組織としての存在価値」が常に問われ続けることになります。関連会社や世間もそれをみているので、ブレたりするわけにはいきません。とくに経営陣は、大きな責任が伴うことを強く自覚しなければなりません。 「組織としての存在価値」が問われるだけでなく、そこでははたらく「人間としての生き方」も問われます。企業経営に携わるトップ、ミドルリーダー、そして、第一線の社員一人ひとりに至るまで、「自分はどうありたいか」、「いかに生きるべきか」といった、「人生観」や「価値観」や「信念」が問われます。職場で終日働くわけですから、当然といえば当然です。 このように、「自らの生き方や働き方を問いつつ、組織において仕事をする」とは、どういうことでしょうか。以下、その参考になりそうなことを下記します。(『共感経営』野中郁次郎/勝見明共著より引用。一部筆者が加筆修正) 《人間は「自らの生き方」を実践すると、そこに「物語り」(その人間が主人公のお話し)が生まれます。 一人ひとりが他のメンバーたちと相互に作用しながら、自己の物語りづくりを通じて、「組織の歴史を生み出していくという 自覚 を持つとき」、 自己の思いや生き方の「価値観」と 「 組織の存在意義」が重なり合います 。 そのことによって、それぞれの思いや価値観が組織のなかで「正当化」(自分の言動が道理にかなっている)されるのです。 そして、その思いや価値観が仕事のなかで実現し、成果に結びついたとき、自己の生き方の 高次な意味 が生まれるのです。》 「あるべき理想の姿(存在意義)」を全員で共有し、シェアすることにより、一人ひとりが 「働きがい」や「生きがい」がもてるようになる、といえるでしょう。 また、「あるべき理想の姿(存在意義)」の共有化を通じて、互いに「共感」(相手の立場に立てること)できるようになり、組織に強力な「一体感」がうまれることにもなります。 さすが北極星(存在意義)ですね。この北極星のことを、はやりの言葉でいえば「共通善」(コモングッド...