【理念経営2.0:「働きがい」について(その10)「人間力の成長」のものさしづくり】
「人間力の成長」のものさしです。
「人間力」とは、これまで「精神」という表現をしてきましたが、ここでは、より具体的で個人的ニュアンスのある「人格」をキーワードにしたいと思います。「人間力の成長」の「レベル」については、いろいろな考え方があると思いますが、本書では仏教や儒教的な考え方をしており、レベルが向上するにつれ、「徳」が高くなっていきます。
「徳ある者」とは、「自分の利益、豊かさ、幸福を考える以上に、他人や社会の利益、豊かさ、幸福を考える人」のことです。(詳しくは、拙著『理念経営入門・第1巻』第2章をご参照ください)
したがって、人格のレベルが上がるにつれ、「利己」的な人格(自分ひとりだけの利益を計ること~テイク・アンド・テイク)から、「利他」的な人格(他人の幸福を願うこと~ギブ・アンド・ギブ)へと比重が移っていくことになります。以下、各レベルについて順にポイントのみ説明します。(理念経営としては、「テイク・アンド・テイク」のレベルは問題外として「ギブ・アンド・テイク」を「レベル1」とします)
レベル1:【利害得失】一言でいえば「損得勘定」ということです。常に自分の利害を中心に考え行動する、いわゆる「ギブ・アンド・テイク」の世界です。他の人への純粋な思いやりの気持ちから発する言動は少ないと思います。
レベル2:【感謝・報恩】レベル2ながらレベルは高いです。ですが、ここをクリアできないと、「利他の精神」にレベルアップすることは困難です。「感謝」と「報恩」はセットです。周りの人や会社のおかげで現在の自分があることに感謝の気持ちが持てて初めて、純粋に心から周りの人や会社に対し、何か喜んでもらえることをしたい、貢献したいという気持ちがわいてくるものです。
レベル3:【教導】「教導」とは、文字通り教え導くことです。したがって「レベル3」は、「指導者やリーダーの精神」ということになります。部下の成長を願い、見識を持って指導ができる、誤りがある場合には時には厳しくしかることもできるという段階です。
レベル4:【寛容】「寛大で、人を許し、受け入れること」です。部下などの欠点をそのまま欠点として見るのではなく、個性として認めることができるか、欠点より長所の方に目がいくかが問われます。
レベル5:【存在感】黙っていても、そばにいるだけで温かみが感じられ、「存在自体」が励ましや勇気づけになる存在です。「レベル5」は「徳あるリーダー」のことでもあります。中国の古典『呻吟語』にリーダーの資質について、「聡明才弁(そうめいさいべん)」「磊落豪勇(らいらくごうゆう)」「深沈厚重(しんちんこうじゅう)」の3つがあると書かれています。「聡明才弁」は頭が切れて弁が立つこと、「磊落豪勇」は物事にこだわらず大らかであること。ここでいう「レベル4・寛容」に近いかもしれません。そして「深沈厚重」は沈着冷静で重みのある人柄。「レベル5」の「存在感」はこんなイメージです。
さあ、あなたはどのレベルに該当しますか?
コメント
コメントを投稿